「家でもっとおいしいカレーを食べたい」
これはカレー研究家である私が、ここ数年ひしひしと感じている消費者のニーズです。カレーの料理教室を開催すると、募集の10倍もの応募があることも稀ではありません。テレビや雑誌などに取材を受ける時も、以前は「おいしいカレー店はどこですか?」という質問が多かったのに対し、近年は「おいしいカレーを作る秘訣は何ですか?」と聞かれることが多くなっています。そうした自分でカレーを作る企画がマスコミの他に料理教室などイベントなどでも非常に好評だそうです。
恐らく、長引く不況の影響で“内食”が盛んになったことも一因でしょうが、日本国内に多種多様なカレー店が誕生して、家カレーが進化の時を迎えているように思えます。
テレビや料理ショーなどでは、限られた時間の中で、わかりやすいポイントしか見せられませんが、実際にカレーをおいしくするには体系的に学んでほしいという思いを、私は常に抱いていました。きちんとした知識があればカレーは確実においしくなる料理です。
そこで今回、新しく事業を立ち上げたのが、この「家カレー向上プロジェクト」です。幸い、志を同じくするカレー界の方々から大きな賛同を得ることができました。日本を代表するカレー店の重鎮、カレー界を牽引する料理人、豊富なテクニックを有する料理研究家など、名だたる方が参加してくださり、皆で「家カレー向上プロジェクト」を盛り上げていきたいと張り切っています。
ところで私は、「家カレー」に対して強い思いがあります。
カレーライスは肉じゃがなどと並ぶ「おふくろの味」、家庭の味の代表格です。どんなに外食店で食べても一番好きなのは家のカレーだという人がいたり、恋人ができた女性が初めて作ってあげる料理がカレーだったり、誰にでも自家製カレーには思い出があると思います。大きな鍋で作り、大勢で食べるカレーは、そうやって日本の食卓を温めてきたのです。
けれど21世紀の今、一人暮らしが増加し、個食化が進んでいます。親から子供への、おふくろの味の継承が途絶えがちなのを、非常に残念に思っています。
そんな時代に、「家でもっとおいしいカレーを食べたい」という欲求は、大げさでなく希望の灯にも思えます。家で作ったおいしいカレーが、疎遠になりがちだった家族の絆を深めるのに役立てれば…。引いては、皆で作ったものをワイワイガヤガヤ談笑しながら食べることで、地域の結びつきを強めることにもつながれば、こんな素晴らしいことはないと考えます。
このプロジェクトに、賛同してくださる方は大歓迎です。料理教室やイベントなどにメンバーが出張して行って、どんどん「家カレー」の輪を広げていきたいと思います。 興味を持ってくださった方は、ぜひ当プロジェクトまで、ご一報ください。お待ちしています。